劇場版名探偵コナンシリーズも成人を迎えて今年で早2年。

特に近年のコナン映画は、昨年の『から紅の恋歌』まで6作品連続で興行収入を塗り替え続けており、年間の邦画ランキングでも毎年上位に食い込むモンスターコンテンツである。

22作目となる『ゼロの執行人』では原作でも屈指の人気キャラクターである安室透をメインに据えていることもあって、公開前からファンの期待値は非常に高いものであったが、今作も見事にその期待に応えた作品であると言える。

この記事では、物語の核心となるネタバレを避けて今作の見どころと感想を語っていきたい。

冒頭から急展開

コナン映画の風物詩と言えるのが爆発だ。

一説によると普段テレビで放送されているアニメ『名探偵コナン』のスポンサーが東京ガスであるため、大規模な爆発や火災の類を表現することは自粛しているということが言われている。

普段、抑圧されているスタッフたちは劇場版になると、この時とばかりに爆発を起こしまくるというのがファンの間での共通認識であり、今作を含めて22作品の中で火の手の上がらない作品を探す方が難しいくらいだ。

『ゼロの執行人』でもスタッフたちはハジケている。
各国首脳が集まる東京サミットを3日後に控えた開催会場『エッジ・オブ・オーシャン』の国際会議場で映画開始早々に大爆発が起こる。

警察の捜査の結果、国際会議場地下にある飲食店の厨房内でのガス爆発が原因であることが判明し、このガス栓はインターネットから操作することが可能なものだったことが判明。

今までの作品だと、日本国内でどうやってこんな量の爆薬を調達しているんだとツッコミを入れたくなることが度々あったが、今回は割りと現実味のある爆発のさせ方である。

オープン前の爆発だったこともあって一度は事故で処理されかけるも、そこに元警察官の私立探偵・毛利小五郎の指紋が発見されたという報告が入る。

一度は任意同行を拒否するも、家宅捜索中の公務執行妨害という形で半ば強引に逮捕されてしまう小五郎。

連行される小五郎を為す術なく見送るしかないコナンをよそ目に、何食わぬ顔でポアロの店先の掃き掃除をする安室透はコナンの必死の問いかけにこう答える。

「僕には命に代えても守らなくてはならないものがあるからだ」

真実と正義がぶつかり合う

今作のメインを務める安室透(画像右)は、普段は毛利探偵事務所の1階にある喫茶店『ポアロ』でバイトしながら、小五郎に弟子入りしている私立探偵だが、その実の顔は警察庁警備局警備企画課(通称:ゼロ)に所属する公安警察官で、本名は『古谷零』

さらにコナンが幼児化する原因となった『黒の組織』にも『バーボン』というコードネームで潜入しているトリプルフェイスを持つ男。

2016年に公開された『純黒の悪夢』からわずか2年で再びメインを張ることになった。

前作エンドクレジット後の予告で発した「ゼロ」という一言ですべて持っていったのはまだ記憶に新しいところである。

容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能の一言では片付けられない驚異的な身体能力に加えて、料理も上手いという完璧すぎる男であり、同時に原作でも何かと謎の多い安室。

今作では頑なにまで自分自身の正義を貫く彼と、徹底的に真実を追い求める主人公・江戸川コナンがぶつかり合うことになるのだが、なぜ安室がすべて敵に回してまでも正義を貫くのかという理由が明らかになる。

今作のオリジナルキャラ

橘鏡子

有罪率9割を超える公安事件であることに加えて有名人である毛利小五郎の弁護に多くの弁護士が尻込みする中、名乗りを上げた若手の弁護士。

事務所を持たずに携帯一つで依頼を取る、“ケー弁”と呼ばれるフリーランスの弁護士であり、公安事件を多く担当している。

ブロガー的にはスマホ一台、体一つで仕事をこなす弁護士もいるというところが興味深かった。
確かに今の時代、事務所を構える必要性も薄れてきているのかもしれない。

経験は豊富だが担当する事件のほとんどが公安事件という性質上、裁判での勝率は芳しくなく、今回の小五郎の裁判にもいまひとつやる気が見られない。

今作のゲスト声優枠であり、演じたのは上戸彩氏。

正直、最初に出てきた時は「あっ、ゲスト声優枠コイツか」とわかる程度に演技が浮き気味だったが、映画が進むにつれて演技が上達していくのがわかるので、それも合わせて観てほしい。

馬場二三一

元司法修習生だったが、とあることがきっかけで挫折。
NAZU(現実でいうNASA)へのハッキングで逮捕され、公安警察の取調べ後に拘置所内で自ら命を絶ってしまう。

今作のゲスト声優枠その2で、演じたのは博多大吉氏。

日下部誠

東京地検公安部に所属する検事。

裁判では負け知らずの公安部のエースと呼ばれている。
もっとも日本の刑事事件の有罪率は9割かつ、ほとんどの場合、検察は確実に有罪を立証できると判断しない限り起訴には踏み切らないので負け知らずなのは当然といえば当然である。

毛利小五郎の事件を担当するが、小五郎に爆破テロを起こす動機がないことなどから事件に違和感を感じ、上司の判断に異を唱える。

キーアイテム&キーワード

IoT機器

2018年の世相を色濃く反映していると言えるのがこれだろう。
IoTとは『Internet of Things』の頭文字を取った言葉で、インターネット経由で家電の操作や機器のモニタリングができる技術のことを言う。

具体例を挙げると、外出先からスマホでTV番組を録画できるレコーダーや、遠隔で自宅の映像を確認することができる見守りカメラといったものなどがIoT機器に当たる。

特に2017年末から『Google Home』や『Amazon Echo』といったAIスピーカーが話題になっているが、IoT機器ならばそれらのスピーカーによる操作が可能だ。

とても便利な世の中になりつつあるが、これはいいことばかりではない。

遠隔で操作できるということは、不正アクセスによって第三者に操作される可能性もあるのである。

最近では自動車にもIoT技術が使われているが、その制御が第三者に奪われた場合、計り知れない被害を招く恐れもある。

ドローン

DDPAS00368 TP V 1

これも近年ブームになっている商品。
今まで数々のオーパーツを生み出してきた阿笠博士が今年もやってくれた。

今作で登場するドローンは阿笠博士が開発したものなのだが、このドローンはなんと高度1万メートルまでの飛行が可能であり、人工衛星を介した通信によって操縦できる。

劇中でコナンが「法律関係大丈夫なのか」と突っ込んでいたが、時計型麻酔銃の時点ですでに薬機法(旧薬事法)に触れているので今更である。

高性能ではあるが操縦が難しいため、速度、姿勢制御、カメラ操作をそれぞれ3つのコントローラーに分割し、少年探偵団の3人が協力して操縦する。

今回はこのドローンが大きなキーアイテムとなる。

無人探査機『はくちょう』

現実の世界では2010年に奇跡の帰還を遂げた無人探査機『はやぶさ』の後継機、『はやぶさ2』が今まさに任務を遂行中だが、『ゼロの執行人』では一足先に無人探査機『はくちょう』が火星調査から帰還する。

安室透の心情を見事に表現した主題歌『零 -ZERO-』

今回、本編と同じく注目していただきたいのが、福山雅治氏が歌う『零 -ZERO-』

この曲は福山氏が実際に『ゼロの執行人』の脚本を読み込んで作詞作曲を行った渾身の一曲である。

コナン映画の主題歌は歴代のどれを取っても名曲揃いであることは今更言うまでもないことだが、この『零 -ZERO-』は今作のメインキャラクターである安室透の心情をこれでもかと言うほどストレートに歌い上げたものであり、映画をすべて観終えたあとのエンドロールで聞くと、この曲に込められた意味がよく分かる。

福山氏の楽曲は2017年12月22日から『Google Play Music』や『Spotify』といった主要な定額制音楽配信サービスで配信を開始されており、もちろん『零 -ZERO-』も聴くことができるので、映画館に行く前に一度聴いておくことをオススメする。

映画を観る前と観たあとでは、曲の印象がかなり変わるはずだ。

まとめ

現実離れしたアクションシーンはもちろん魅力の一つなのだが、個人的には現実のトレンドも絡めて練り込まれたストーリーと時間的制約の中で多くの登場人物に見せ場を用意した脚本に感心した。

冒頭からエンドロールまで、目を離すことができない作品に仕上がっており、毎年実写も含めた多くの作品を押しのけてトップに躍り出るだけのことはある。

安室透の新たな一面、そして他のキャラの魅力を改めて知ることができる今作をあなたにも是非、見届けてほしい。

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