ゲーム実況の動画を録りたいと思い立ち、USBコンデンサーマイクの「マランツプロ MPM-4000U」で購入して収録してみたはいいが、エアコンなどの環境音とポップノイズが入ってしまって動画には使えなかった。
そこで思い切って乗り換えたのが、今回紹介する「SHURE SM7dB」だ。
結論から言うと、収録した音声は劇的に聞きやすくなった。
SM7dBは、ダイナミックマイクの中でも高価な部類に入るので、初心者がいきなり手を出すようなマイクではないことは百も承知だったが、いくつも買い替えて失敗を繰り返すよりはと、思い切って購入した次第だ。
この記事は、僕と同じように「USBマイクでゲーム実況を録ってみたけど、環境音やポップノイズで悩んでいる」という人に向けて書いている。オーディオ機器には詳しくない素人の目線で、実際の使い心地と必要な機材、設定についてまとめていく。
SHURE「SM7dB」とはどんなマイクか
SM7dBは、2001年にShureが発売して以来、多くのプロの現場で愛されてきた名マイク「SM7B」の弱点であるゲイン不足(出力が小さい)という弱点を、マイク自体にプリアンプを内蔵することで克服した進化モデルだ。
見ただけでもうプロ仕様だとわかる重厚な佇まい。

まずは、買う前に押さえておきたいポイントを4つに分けて整理していこう。
コンデンサーマイクとダイナミックマイクの違い
マイクは、大きく分けて「コンデンサーマイク」と「ダイナミックマイク」の2種類がある。
前に使っていたMPM-4000Uはコンデンサーマイクで、今回のSM7dBはダイナミックマイクだ。ざっくり言うと、こんな違いがある。
| コンデンサーマイク | ダイナミックマイク | |
|---|---|---|
| 音の拾い方の傾向 | 小さな音まで繊細に拾いやすい | 感度は控えめで、近くの音を中心に拾いやすい |
| 向いている環境(傾向) | 静かな環境 | 周囲に音がある環境でも使いやすい |
| 僕の使用機材 | MPM-4000U(USB接続) | SM7dB(XLR接続) |
コンデンサーマイクは繊細に拾えるぶん、エアコンの音のような環境音も一緒に拾いやすい。僕がMPM-4000Uで困ったのは、まさにここだった。
一方のダイナミックマイクは、一般的に構造が頑丈で、環境音の影響を受けにくい傾向があると言われている。ただ「ダイナミックなら必ず消える」という単純な話でもないので、その点は後半の「なぜ変わったのか」で触れる。
内蔵プリアンプ(+18dB / +28dB / バイパスの3択)
ダイナミックマイクは、拾った音の信号が小さめになりがちだ。そのため、オーディオインターフェース側でゲインをしっかり上げて、音量を稼ぐ必要がある。
※ゲインとは、マイクが拾った音の信号をどれだけ増幅するか(入力段階での音の大きさ)のことだ。
SM7dBは、この音量を持ち上げる役割を担うプリアンプを本体に内蔵している。背面のスイッチで、次の3つから選べる。
| モード | 内蔵プリアンプ | +48Vファンタム電源 |
|---|---|---|
| +18dB | 音量を+18dB持ち上げる | 必要 |
| +28dB | 音量を+28dB持ち上げる | 必要 |
| バイパス | 使わない(SM7Bと同等の出力になる) | なくても動作する |

ただし、音量が足りるかどうかは、声の大きさや口との距離、つなぐインターフェースによって変わる。「SM7dBなら必ずゲインが足りる」とは言い切れない。
僕の環境での設定と結果は、あとの「ZG-01での設定」で紹介する。
ファンタム電源が必要な点
SM7dBを買うときに盲点になりやすいのがここ。
一般的にダイナミックマイクは電源を必要としないが、SM7dBの内蔵プリアンプ(+18dB / +28dB)を動かすには、インターフェース側から「+48Vファンタム電源」を供給する必要がある。
※ファンタム電源とは、マイクケーブル(XLRケーブル)を通してマイクに電気を送る仕組みのこと。主にコンデンサーマイクを動かすときに使われる。
Shure公式のユーザーガイドには「ファンタム電源なしのバイパスモードで動作します」とある。つまり、ファンタム電源が入っていないと、スイッチを+28dBにしていてもプリアンプは働かない。
購入前に、自分が使う(または買う予定の)オーディオインターフェースに「+48V」のスイッチがあるかを、必ず確認しておこう。
SM7Bとの違い
先代の「SM7B」との違いが気になる人もいるだろう。僕はSM7Bを使った経験がないのでここは、Shureが公式に公開している情報をもとにした整理にとどめる。
| 項目 | SM7dB | SM7B |
|---|---|---|
| 音を拾うカプセル | SM7Bと同一 | — |
| 内蔵プリアンプ | あり(+18dB / +28dB / バイパス) | なし |
| バイパス時の出力 | SM7Bと同等 | — |
| 低域カット・プレゼンスブーストの切り替え | あり | あり |
| 内蔵の防振構造(エア・サスペンション式) | あり | あり |
| 付属のウインドスクリーン | フォーム製と大型(A7WS) | フォーム製とクローズトーク用 |
| 出力インピーダンス※ | バイパス時150Ω/プリアンプ時27Ω | 150Ω |
※出力インピーダンスは、マイクの出力側の電気的な特性のこと。細かい話なので、読み飛ばしてもらって大丈夫だ。
表の「低域カット」は低い音をカットする機能、「プレゼンスブースト」は中音域を強調する機能で、どちらも背面のスイッチで切り替える。
「内蔵の防振構造」は、マイクの内部で振動を吸収する仕組みのことだ。コンデンサーマイクでよく使う、外付けの輪っか状のショックマウントとは別物になる。
公式のスペック説明を見る限りは、音を拾う部分の基本性能はSM7Bと同じで、そこにプリアンプが加わったのがSM7dBという理解で間違いはないだろう。
実際にゲーム実況の環境で録り比べてみた
ここからは、乗り換え前のMPM-4000Uと、乗り換え後のSM7dBで、同じ条件で録った音声を聞き比べてもらおう。
エアコンをつけた状態で、実況時と同じ口との距離のまま、同じ文章を読み上げている。
マランツプロ MPM-4000Uの音声サンプル
まずは、乗り換え前のUSBコンデンサーマイクの音声だ。ポップノイズ対策として、サードパーティ製のポップガードも付けて録っている。

エアコンのサーッという音が入っているのがわかると思う。息がマイクに当たるポップノイズがサ行で出ているのが感じられ、ポップガードを付けていても完全には除去できていない。
SM7dBの音声サンプル
続いて、同じ部屋、同じエアコンをつけた状態で、SM7dB(+YAMAHA ZG-01)で録った音声がこちらだ。
どうだろう? エアコンの音もポップノイズも、僕の環境では劇的に聞きやすくなったと感じている。これなら動画で使用しても差し支えないレベルだと思う。
ただ、「ペチャ、クチャ」というようなリップノイズまでは完全に除去できるわけではないので、収録前に水をこまめに飲むなどの対策は必要だろう。
なぜ変わったのか
「なぜマイクを変えただけで、ここまで変わったのか?」素人なりに調べたので整理しておきたい。
ネットでは「ダイナミックマイクは特定の範囲の音しか拾わないから、環境音が入らない」と説明されることもある。ただ、公開されているスペックを見ると、前に使っていたMPM-4000Uも、SM7dBと同じ正面の音を中心に拾う性質を持った単一指向性を持ったマイクだった。
つまり指向性の違いが決め手、という話ではなさそうだ。僕なりに、効いていそうな要素を挙げてみる。
- 口との距離:ダイナミックマイクは口元に近づけて使うのが一般的で、近づけるほど自分の声は大きく、環境音は相対的に小さく録れる。
- 感度の違い:ダイナミックマイクはコンデンサーマイクよりも振動板が重く、遠くの小さな環境音程度には反応しない特徴を持つ他、特にSM7dBは正面以外から入ってくる音をカットする能力が非常に優秀。
- 付属のウインドスクリーン:SM7dBには、息の当たる音を抑えるためのウインドスクリーンが付属している。ポップノイズが減ったのは、これが働いている可能性がある。より大きなポップガードも付属しているが、僕の環境ではデフォルトで装着されているもので充分だと感じている。
どの要素がどれだけ効いたのかを、きれいに切り分けることは僕にはできない。ただ、「ダイナミックマイクを、口元にしっかり近づけて使う」というスタイルに変えたことが、僕の部屋の環境にはハマった。
SM7dBを使うための接続と設定
ここからは、実際にSM7dBをPCにつないでゲーム実況を録るための機材構成と、僕の設定を紹介する。
必要な機材のチェックリスト
まず注意したいのが、USBケーブル1本でPCにつなげたUSBマイクとは違って、SM7dBはマイク単体を買っただけではPCにつなげないという点だ。
SM7dBを使うには、次の4点が必要になる。
| 必要なもの | 選ぶときのポイント | 僕の使用機材 |
|---|---|---|
| マイク本体 | — | SHURE SM7dB |
| オーディオインターフェース | XLR端子と+48Vファンタム電源に対応しているもの | YAMAHA ZG-01 |
| XLRケーブル | マイクとインターフェースをつなぐケーブル | YAMAHA バランスケーブル YBC03 |
| マイクアーム(またはスタンド) | 約837gの本体をしっかり支えられるもの | Elgato Wave Mic Arm(吊り下げ型) |

SM7dBには内蔵の防振構造と、ウインドスクリーンが最初から付いている。他のマイクではほぼ必須となる外付けのショックマウントやポップガードを前提にしなくていい作りなのは、うれしいところだ。
とはいえ、USBマイク1本で済んでいた頃と比べると、導入にかかる費用はどうしても大きくなる。価格は変動するため、リンク先で最新価格を確認してほしい。
ZG-01での設定
オーディオインターフェースとして組み合わせているのは、ゲーム配信向けのミキサー「YAMAHA ZG-01」だ。
「ZG-01につないで、SM7dBの音量はちゃんと足りるの?」と気になる人も多いと思うので、僕の実際の設定を公開しておく。

| 機材 | 項目 | 僕の設定 |
|---|---|---|
| SM7dB | 内蔵プリアンプ(背面スイッチ) | +28dB |
| SM7dB | 低域カット・プレゼンスブースト | フラット |
| ZG-01 | ファンタム電源 | 操作パネルの[48V]ボタンを長押ししてON(LEDが点灯) |
| ZG-01 | マイクゲイン(MIC GAINのツマミ) | 半分より上 |
| ZG-01 | マイクのフェーダー | 最大 |
SM7dBは、ZG-01の背面にある「MIC IN」端子に、XLRケーブルでつないでいる。
僕の環境(声量・口との距離・ZG-01の組み合わせ)では、この設定でゲーム実況に十分な音量になった。ただし、これはあくまで僕の場合の話で、誰でも同じ設定で足りるとは言い切れない。
ゲインを上げすぎるとサーッというホワイトノイズが大きくなるが、少なくともこの設定においてはホワイトノイズは聞き取れないということは音声サンプルでわかると思う。
ZG-01そのものの使い心地やミキシング機能は、別の記事で詳しくレビューしている。気になる人は、あわせて読んでみてほしい。

マイクアームの選び方
SM7dBは約837gと、手に持つとズッシリ重いマイクだ。しっかり支えられるマイクアームを選びたい。
マイクアームには、大きく分けて2種類ある。上から吊るして口元へ持ってくる「吊り下げ型」と、デスクの上すれすれを這うように伸びる「ロープロファイル型」だ。
僕が選んだのは、Elgato(エルガト)の吊り下げ型アーム「Wave Mic Arm」。

僕のデスクサイズだとゲーム中に動かすマウスや、デスクの上に置いたマグカップにアームが干渉しそうだったこともあり、ロープロファイルは断念した。
吊り下げ型なら、アームがデスクの上のスペースに入ってこない。そう考えて、Wave Mic Armに決めた。
こんな人には向かないかも
ここまでSM7dBの良さを語ってきたけど、安い買い物ではないし、人を選ぶマイクだとも思う。スペックから考えてこういう人には向かないかもしれないというポイントも、正直に挙げておきたい。
- USBマイク1本で、手軽に済ませたい人:XLRケーブル、ファンタム電源対応のインターフェース、重さに耐えるマイクアームを揃える必要がある。手軽さを最優先する人にはハードルが高い
- マイクを口元に近づけたくない人:ダイナミックマイクは、口から離すほど声が小さく録れる。その分ゲインを上げると、環境音も一緒に持ち上がってしまう
- ファンタム電源(+48V)がないインターフェースを使っている人:内蔵プリアンプが動かず、バイパスでしか使えない。SM7dBを選ぶ一番のメリットが消えてしまう
- 既にプリアンプを持ってる人:この場合はSM7Bを選んだ方が費用面では安く済む。配線を少しでもシンプルにしたいならSM7dBを検討する価値がある
逆に、機材を揃えてでも、自宅のエアコン音やポップノイズをなんとかしたいという人には、有力な選択肢になると思う。
自宅だからこそ導入したいマイク

最後に、SM7dBを使ってみての要点をまとめておこう。
- 環境音とポップノイズ:僕の環境では、エアコン音とポップノイズが劇的に減った
- 内蔵プリアンプ(+18dB / +28dB / バイパス):ZG-01と組み合わせて、+28dBで十分な音量になった(あくまで僕の環境の話)
- +48Vファンタム電源が必須:ダイナミックマイクでも、プリアンプを動かすにはインターフェース側の電源ONが必要
- 防振構造とウインドスクリーンが最初から付属:外付けのショックマウントやポップガードを前提にしなくていい
- 周辺機材の準備が必要:XLRケーブル、インターフェース、約837gを支えられるマイクアームを別に揃える
USBコンデンサーマイクの音声に悩んでいた僕にとって、SM7dBへの乗り換えはやってよかったと思える選択だった。収録した音声を聞いて「これなら動画に使える」と思えたのが、何よりうれしい。
SM7dBは、ダイナミックマイクの中では高価な部類に入る。それでも「環境音の悩みをなんとかしたい」という人は、ぜひ一度チェックしてみてほしい。
